『乳がん』ていったいどんな病気?痛いの?治るの?
乳がんは乳房のどこにでもできる病気です
乳がんは乳房の中の小葉組織(母乳を作るところ)や乳管組織(母乳を乳首まで運ぶ管)から発生する悪性腫瘍です。
ひとつのがん細胞が1センチくらいの大きさになるまでには約5年、2センチになるのに約8年かかるといいますが、それくらいの大きさになると自分で乳房を注意深くさわるとわかるしこりになります。さらに病気が進むとえくぼのようなくぼみができたり、ひふが赤く腫れたりしてきます。
炎症性乳がんの場合は、乳房表面の皮膚がオレンジの皮のようにざらざらとしてきて赤くなり、痛みや熱感を伴うことがあります。
図1)乳がんの10年生存率(1990年治療開始)
(日本乳癌学会「全国乳がん患者登録調査報告第29号」より)
Tis:乳管内にとどまるがん。非浸潤がん(超早期)
0期:しこりや画像診断での異常な影を認めないもの
1期:2cm以下のしこりで、リンパ節への転移がないと思われるもの
2期:2cmを超える5cm以下のしこりがある、もしくはリンパ節への転移が疑われるもの
3a期:しこりが5cmを超えるもの
3b期:しこりが皮膚などに及んでいるもの
4期:しこりの大きさを問わず、他の臓器に転移がみられるもの
かかりやすい年齢
乳がんの発生は20歳前後から認められ、30歳代で増加、40代後半と60代後半~70代前半までがピークです。その後も少し数は減りますが、依然として高い発生率です。ですから70、80歳の乳がんも多いです。
つまりだれでも20歳をすぎたら、そしていくつになっても、乳がんにかかる可能性のある「乳がん年齢」(乳がん適齢期)なので定期的な検診が必要です。
日本の乳がん事情について
乳がんになる人の数(罹患者数)は1996年に女性の悪性疾患の第1位になって以来、年々右肩上がりに増加し、2015年の推定罹患者数は89,400人になっています。2017年の罹患者数から統計的に算出したゼロ歳の人が、乳がんにかかる女性の割合(累積罹患リスク)は、9人に1人となります。このように、乳がんは女性にとってごく身近に起こる病気です。
また、乳がんで亡くなる方の数(死亡数)も年々増加していましたが、2012年に12,529人とわずかに減少しましたが、2013年から増加に転じ、2015年には13,584人の方が亡くなられています。特に36歳から60歳の年齢層のがん死亡原因の中では乳がんが一番多く、また乳がんによる死亡者数の半分がこの年代の人が占めています。この年代の女性は働き盛り、また子育ての最中おかあさんが多く、治療や死亡が社会や家庭に与える影響はや損失ははかりしれません。
このような日本の現状であっても、多くの人が乳がんに対する関心や知識が低く、発見された時にはすでに進行している場合が少なくないと言う悲しい状況です。
早期発見が大事な理由
早期発見の最大のメリットは「乳がんで死ななくてすむ」という確率が高いことです。
図1でわかるように、小さな乳がんはほとんど命を脅かすことがないのです。そして、乳がんが発生した小さな部分に留まり自覚症状もない状態なら、乳がんの手術も恐れる事はありません。
早期発見なら乳房を温存するなど、自分の希望する手術法や治療法を医師と相談して選択できる可能性も高いからです。また、入院期間や再発防止の治療期間なども短いので経済的負担も軽くすみます。きっと今までと同じようなライフスタイルを続ける事ができるでしょう。
乳がんが「見つかる事」が恐い事なのではなく、「知らないまま」が恐い事。あなた自身の身体と生活を守りあなたを愛する人たちを悲しませないために、「自分でできる事」と「ちょっと勇気があればできる事」を知り実行しましょう。
『乳がん』を他人事と思っていませんか?
二十歳を過ぎれば誰でも乳がん年齢です。そして乳がんになったら辛い思いをするのは貴女だけではありません。あなたを愛する家族・友人・まわりの人達も悲しい思いをします。
『乳がん検診』を受けてみませんか?
日本の女性が罹患する悪性疾患のうち罹患率第一位が、乳がんです。そしてその現状は罹患率・死亡率とも増え続けています。その原因は、日本の乳がんの検診率の低さだと指摘されています。一方海外に目を向けてみますと、欧米諸国の罹患率は増えているものの死亡率は徐々に低下しているのが現実です。 何故なんでしょう。それは、対象年齢の約70%がマンモグラフィー(乳がん専門のレントゲン機器)を中心とした乳がん検診を定期的に受診しているからと言われています。